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PHOTOGRAPHERS/USEFUL PHOTOGRAPHY ·コンセプチュアルアート ·UPDATED 2026.08
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§ 243 — Photographer Index — コンセプチュアルアート

ユースフル・フォトグラフィー

Useful Photography 2000s–
Countryオランダ Period1990–2000s Channelイメージを疑う · CONCEPTUAL
Abstract

ユースフル・フォトグラフィーは、カタログ、取扱説明書、ネットオークション、家畜記録、結婚式など、芸術作品としてではなく具体的な用途のために撮られた写真を集める編集・出版プロジェクト。Hans Aarsman、Erik Kesselsらが、匿名画像を用途ごとに選び直し、雑誌として配列することで、写真が日常社会で果たしてきた機能を可視化した。

この写真家が変えたこと

従来の写真史は、撮影者、代表作、プリントを単位に組み立てられやすく、ファウンドフォトの先行実践でも、既存写真を作家の作品へ再文脈化することが中心だった。Useful Photographyはさらに、作者名のない「仕事用・実用用の写真」を、元の用途ごとに大量に集めて並べた。その結果、評価の軸は「誰がどれだけ美しく撮ったか」から、「何のために撮られ、どんな型が反復され、どこで使われたか」へ移る。新しく撮影せず、収集、分類、編集、出版を制作にしたことが、このプロジェクトの最も分かりやすい変化である。

Keywords Useful Photography ヴァナキュラー写真 ファウンドフォト Erik Kessels Hans Aarsman 実用写真
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目次 · Table of Contents
§ 01 / 04 背景と時代

1970〜90年代のファウンドフォトから、2000年のUseful Photographyへ

Useful Photographyは、Hans Aarsman、Claudie de Cleen、Julian Germain、Erik Kessels、Hans van der Meerらによって2000年頃に始まった。Leiden Universityの写真史資料は、Aarsmanが2000年にこの雑誌を共同創刊し、各号を「user’s photography(使用者の写真)」の特定テーマへ集中させたと記録している*21。Erik Kesselsの公式説明でも、対象はカタログ、マニュアル、包装、パンフレット、インターネットなど、明確な目的のために作られた匿名的な写真とされる*1。各号はネットオークション、行方不明者、家畜、ビフォー/アフター、写真マニュアル、結婚式、映画のコンティニュイティ写真などへ対象を広げた*2。第1号の出版社説明も、公的展示を想定しない機能的な写真を、編集によって別の読みへ開くことを基本方針としている*3。このプロジェクトには先行する流れがあり、1970年代以後には拾得写真、家族写真、業務写真を美術や出版へ持ち込む実践が蓄積していた。Eye MagazineはDick Jewell、Joachim Schmidらの先行例をたどり、1994年創刊のOhioとUseful Photographyを、1990年代から2000年代に広がったヴァナキュラー/ファウンドフォトの出版文化の中へ位置づけている*22

作者中心の写真市場と、インターネットで増殖する「他人の写真」

2000年前後は、ファインアート写真が限定プリント、作家名、来歴を伴って市場で価値づけられる一方、家庭写真、商品写真、ネット上の画像は作者を意識されないまま大量に流通し始めた時期でもある。Eye Magazineは、ファウンド/ヴァナキュラー写真の拡大を、作者中心の美術写真市場への違和感と、インターネットによる画像交換の加速の双方から論じている*22。The Photographers’ Galleryの「Found, Shared」は、Useful PhotographyをFound Magazine、Ohioと並べ、捨てられた写真、ネット画像、アマチュア・コラージュなどを素材にする雑誌文化として展示した*24。2008年のNew York Photo Festivalでは、「The Ubiquitous Image」の枠組みの中でUseful PhotographyがJoachim Schmid、Peter Pillerらと並べられ、複製、再生産、既存画像の巨大な蓄積そのものが写真表現の問題として提示された*23。この時代背景があるからこそ、Useful Photographyの編集者は「新しい傑作を撮る」方向を離れ、すでに社会に満ちている写真を探し、用途ごとに並べ直すことを選んだ。雑誌という安価で反復可能な形式は、美術館の壁に一点を掛けるより、実用写真が本来持っていた大量性と連続性を保つのにも適していた。

§ 02 / 04 表現の核心

「美しいか」より「何の役に立ったか」を最初に問う

Useful Photographyの選択基準の中心は、写真家の名声や一枚の完成度より、写真がどんな仕事を担ったかにある。第10号は結婚式写真を扱い、儀式に必要な定型ポーズが地域を越えて反復されることを見せる*4。第12号はジグソーパズルの箱に印刷された「完成図」を集め、商品が正しく完成した状態を示すための画像だけを反復する*5。ここで写真の凡庸さは、用途を読むための手掛かりになる。似た画像が大量に存在するからこそ、社会が写真へ要求した機能や型が見える。結婚式なら同じキス、パズルなら完成形、家畜なら評価に適した立ち姿というように、撮影者の個性を抑えることがむしろ成功条件になる写真が大量に存在する。この事実は、作家性を写真価値の中心に置く美術写真とは別の歴史を示す。

編集が撮影に代わる――シリーズの意味は並べた時に生まれる

International Center of Photographyの図書館もUseful Photographyを継続的な写真出版物として所蔵し、個々の作者より編集シリーズとして記録している*6。Eye Magazineのレビューは、Useful Photographyがアートマーケットや編集写真を中心とする写真観を相対化し、日常に存在する画像の力を認める企画だったと論じる*7。一枚だけなら価値の低い業務写真に見えても、同じ用途の写真を数十、数百と並べると、撮影マニュアル、商取引、家族儀礼、商品分類のルールが可視化される。編集そのものが、写真の社会的規則を発見する制作工程になる。同じ用途だけを集めることで、個々の写真に偶然含まれた面白さと、その用途が要求した共通形式を分けて見ることができる。シークエンスは「傑作を選ぶ」ためではなく、写真が従っていた規則を比較可能にするために働く。

なぜ新しく撮らないのか――匿名性と目的を保存するため

Hans AarsmanはVPROのインタビューで、事前にスタイルを決めた「美しい写真」への違和感から、自分で撮ることを減らし、スーパーマーケットやeBayなど既存画像を読む方向へ進んだ経緯を説明している*8。Useful Photographyが同じ題材を作家自身で再撮影しないのは重要である。同じ題材を再現すると、実用品らしさを演出した美術作品へ変わり、もとの用途が写真を形づくった条件を失ってしまう。用途のために生まれた画像をそのまま集めることで、作者の意図より先に社会の要求が写真形式を作っていた事実を残せる。

§ 03 / 04 代表作・方法・媒体

雑誌という形式――写真の「標本箱」を毎号作る

2007年にThe Photographers’ Galleryで開かれた「Found, Shared」を論じたGuardian評は、Useful Photographyの主題別編集が雑誌では有効に働く一方、巨大なプリントとして美術館へ拡大すると元の用途やスケールが失われる場合があると批評した*9。この指摘は、雑誌という媒体の必然性を逆に示す。小さな写真をページごとにめくり、類似と差異を比較する形式は、作品を一点ずつ鑑賞するギャラリーより、カタログや資料集の読み方に近い。

Erik Kessels――「撮らない写真家」ではなく編集者として働く

GuardianのKessels論は、彼をファウンド/ヴァナキュラー写真の主要な編集者として紹介し、Useful Photographyが芸術写真やドキュメンタリーより機能的画像を選ぶこと、第2号のネットオークションや第5号の家畜写真などを具体例に挙げる*10。別のインタビューでもKesselsは、既存写真をPhotoshopで改変するより、選択、再配置、順序によって物語を作る姿勢を説明している*11。写真の内容を加工しないことは中立を意味せず、元画像の用途を読める状態で残し、その関係だけを編集で変える選択である。

マニュアル写真、家畜、行方不明者――「型」が主役になる

Arlesの写真祭でAarsmanが行ったUseful PhotographyのレクチャーをGuardianは、日常の実用写真を注意深く読む試みとして紹介した*12。第9号は写真初心者向けマニュアルの作例を集め、正しい露出や構図を教えるために作られた写真が、結果として「良い写真」の規範を大量生産していることを見せる*13。作者名や傑作性を外すと、写真史の別の層――商品を売る、人物を探す、牛を評価する、失敗を防ぐ、儀礼を証明するための視覚的テンプレート――が現れる。

§ 04 / 04 批評と写真史上の位置

ヴァナキュラー写真の再評価と、その危うさ

The Metが2000年に開催したThomas Waltherのヴァナキュラー写真展は、匿名的なスナップや偶然の失敗を美術館で再評価する同時代の文脈を示す*14。TIMEは後年、Kesselsらが忘れられたアマチュア写真を再編集し、別の観客へ届ける実践を紹介した*15。Carnegie Museum of Artも、セルフィー以前の自己撮影、家族肖像、フォトモンタージュなどをヴァナキュラー写真コレクションとして保存している*16。Amon Carter Museumは、こうした画像を生活の記録と集合的記憶を理解する資料として説明する*17。Useful Photographyはこの再評価と接続する一方、画像を美術館へ移した瞬間に元の用途が薄れるという矛盾も抱える。

写真史上の意味――傑作の歴史から、画像システムの歴史へ

FoamのErik Kessels紹介は、アルバム写真や匿名画像の収集・展示を彼の継続的な活動として位置づけ、Useful Photographyをその中心的プロジェクトの一つに挙げる*18。初期4号をまとめた書誌記録からも、複数の編集者が継続的に参加し、一冊ごとに異なる実用画像の集合を作ったことが確認できる*19。『Photo Art: Photography in the 21st Century』にもUseful Photographyが収録され、撮影者中心の現代写真から、収集・編集・出版を制作とみなす流れへ接続している*20。このプロジェクトが写真史へ加えたのは「無名の写真にも美がある」という発見だけではない。社会の中で写真が分類、証明、販売、教育、記憶のために働く仕組みそのものを、写真史の中心的な対象へ押し出したことである。さらに、元の用途を失った写真を美術の文脈へ移す行為が新しい価値を生むと同時に、元の機能を消してしまう矛盾も露出した。Useful Photographyはその矛盾を解決するより、雑誌という編集形式の中で繰り返し見せ続けた。

§ REL 関連する写真家・運動
Photographers
  • オハイオ ― 撮影済みの写真を収集・配列し、作者より分類と編集の意味を前面に出す比較対象
  • イェンス・ウルリッヒ ― 既存写真の切断、再利用、複製を通して画像の所有と流通を問う関連作家
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