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PHOTOGRAPHERS/GUADALUPE RUIZ ·コンセプチュアルアート ·UPDATED 2026.08
GR
§ 169 — Photographer Index — コンセプチュアルアート

グアダルーペ・ルイス

Guadalupe Ruiz
Countryメキシコ / スイス Period1980–1990s Channelイメージを疑う · CONCEPTUAL
Abstract

グアダルーペ・ルイスは、ボゴタとスイスを往復する生活から、家族、室内、都市、食物、子どもの工作など身近な対象を撮影し、写真集と展示へ編むコロンビア出身の写真家・アーティスト。《Bogotá D.C.》《Kleine Fotoenzyklopädie》《Petit Suisse》などで、移住による距離、日常の観察、分類と印刷を一続きの制作として扱う。

この写真家が変えたこと

《Bogotá D.C.》でルイスは、ボゴタの社会階層を人物の肖像で代表させず、住人を写さない120点の住宅写真を階層と題材ごとに並べた。ベッド、居間、外観、庭、卒業証書の違いを比較させ、都市を住宅内部の連続として見せる。後の《Kleine Fotoenzyklopädie》では旅先の645点を私的な分類へ分け、《NY Apples and Pears》ではその一章の果物写真を再印刷・切断して新しい静物へ組む。写真集ごとに、住宅の階層比較、旅先の私的分類、印刷画像の再加工という別の規則を作っている。

Keywords Bogotá D.C. Kleine Fotoenzyklopädie NY Apples and Pears Petit Suisse El Libro ilustrado 移住と家族
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目次 · Table of Contents
§ 01 / 04 背景と時代

ボゴタからスイスへ――距離が日常を見直させる

ルイスは1978年にボゴタで生まれ、1996年にスイスへ移住し、ローザンヌのECALなどで写真を学んだ。現在はビール/ビエンヌを拠点に、コロンビアとスイスを往復する経験を制作へつないでいる*1

本人はインタビューで、家族と物理的に離れ、出自を別の言語で説明する経験が、身近な人々をもう一度見て、眼を鍛える契機になったと語る*2。移住は作品の主題として抽象化されるより、誰をどの距離から見るか、何を説明しなければ共有できないかという撮影の条件になる。

写真を「正確に見る」ために選ぶ

ルイスはインタビューで、写真を選ぶ理由を、見えているものをできるだけ正確かつ具体的に示したいからだと説明している。特殊効果や過剰な演出で現実を別物へ変えるより、目の前にある物や人をよく見て、その差異を写真へ残すことを優先する*2

FotoTazoのインタビューでも、スイスへ移った後にボゴタの日常が急に新しく見えるようになり、家族、友人、室内を撮り始めた経緯が語られている*3スイスから故郷を見返す距離によって、以前なら見過ごした家具、色、服、食物へ注意が向くようになった。

§ 02 / 04 表現の核心

《Bogotá D.C.》――家の内部から都市の階層を見る

《Bogotá D.C.》では、ボゴタの社会階層を人物の肖像で代表させず、住人を写さない住宅内部と外観を撮影した。本人は自然光と中判カメラを使い、ベッド、居間、外観、内外の庭、卒業証書など120点を社会階層と題材別に格子状へ並べたと説明している*2。写真集『Bogotá D.C.』はScheidegger & Spiessから刊行され、住宅の差を一冊の比較構造として見せる*5

スイスから帰省して撮影する距離は、故郷を懐古的な像へまとめるためではなかった。ルイスは、過去より現在に関心があり、消えつつある場所を撮ることで、その写真が後に歴史資料になる可能性もあると語っている*2。《Bogotá D.C.》の住宅写真は、帰属を象徴する一枚より、その時点の家具、装飾、建築の差を残す方向へ組まれている。

Santiago Rueda Fajardoは2011年の批評で、ルイスの仕事に時に作為的な凡庸さが見えると留保しつつ、《Bogotá D.C.》については、都市環境を好奇心をもって観察し、ありふれた生活の中から奇妙さを見つける点を評価した。当時のコロンビアでは写真集の出版環境自体が限られていたという指摘も、住宅内部を一冊の比較構造へまとめた選択の背景を考える手掛かりになる。 *21

《Kleine Fotoenzyklopädie》――個人的な分類の本

《Kleine Fotoenzyklopädie》は、建築、芸術、社会、食物、自然などを旅先で撮りため、645点を私的な分類で編んだ写真集である。花、家の装飾、ジャガイモ、トウモロコシ、菓子が同じ本の中で知識の項目になる*7

本人は、撮影から組版、オフセット印刷までを可能な限り自分で行い、デジタル写真へ物質的な手触りを与えようとしたと語る*8。645点は建築、芸術、食物、自然など作家自身が決めた項目に分けられ、一般的な百科事典とは異なる私的な分類順がページ上に作られる。

WorldCatの書誌は《Kleine Fotoenzyklopädie》を2015年刊、645点の写真からなる出版物として記録している。多数の写真を同じ項目内で反復させるため、花、食物、家具などは一枚の代表写真で示されず、似ている物同士の差をページ単位で見比べる構成になる*23

切り抜きと再印刷――《NY Apples and Pears》

《NY Apples and Pears》は、ニューヨーク州で撮影したリンゴと洋梨を再印刷し、切り抜き、新しい静物構成へ組み直した出版物である。本人は、写真を再印刷して切り出し、別の組み合わせへ変えた制作過程を説明している*2。Kodoji Pressから2017年に刊行された同書は、20ページに11点のモノクロ図版を収める*9

Perimeterの紹介は、果物の反復が分類とポップな表面を作り、ニューヨーク=「ビッグ・アップル」という言葉の連想にも接続すると説明する*10。ここでルイスは、撮影したリンゴと洋梨をそのまま図鑑の写真として残さず、いったん印刷し、輪郭で切り抜き、別の紙面へ配置する。《Kleine Fotoenzyklopädie》の分類項目だった果物が、印刷物を材料にした新しい静物へ変わる。

家族の時間を、子どもへ渡す本にする

《Lupita, je garde un abricot…》では、故郷ボゴタの写真と文章を、スイスで育つ息子へ渡す本として編集した*11。息子が同じ時代のボゴタを経験していないからこそ、家族アルバムのように連続した成長記録を作るのではなく、街、物、記憶の断片を文章と写真で手渡す。本の形式が、母親の記憶と子どもの未経験の土地を同じページ上で接続する。

2025年の《El Libro ilustrado / The Picture Book》と展覧会「Consuelo」では、自宅で演出した像、息子を長年撮った銀塩写真、さまざまな収集画像を一冊へ混在させた*12家庭は、撮影、刺繍、読書、ワークショップを通して知識が受け渡される制作場所として現れる。

§ 03 / 04 代表作・方法・媒体

《Petit Suisse》――子どもの工作を類型化する

《Petit Suisse》は、息子が身近な素材で作った小さな彫刻を、スタジオで一つずつ同じように撮影したシリーズである。Images Veveyは、子どもの工作を「本物の美術作品」のように撮影した作品として紹介し、複数の出自をもつ家庭で生まれた造形を現在のスイス社会とも結びつけている*13。家庭内で一時的に作られた物が、一定の撮影方法によって比較できる写真系列へ変わる。

ECALもFestival Images Veveyでの発表に際し、《Petit Suisse》を息子との関係から生まれたシリーズとして紹介している。ルイスが2002年に同校を卒業したことを含め、スイスで受けた写真教育と、家庭内で日々生まれる工作物を同じ類型的な撮影へ置く経路が確認できる。 *22

報道写真の経験と、後から生まれる資料価値

学生時代の《San Vicente del Caguán》では、コロンビアの非武装地帯でFARCの日常を撮影した。現場での許可と撤回、危険、報道する立場への不安から長く未整理のまま保管し、後年になって歴史資料として自主出版したと本人は述べる*15

《Nada Es Eterno》(Oodee, 2014)は、家族表象を扱う28頁の限定出版である。Oodeeは、ルイスが家族の成員を日常の場面で撮り、アイデンティティと社会的表象、家族をめぐる固定観念を扱う作品として紹介している*6。報道現場を撮った《San Vicente del Caguán》とは題材が異なるが、どちらも写真をどの時点で、どの形式で公表するかまで含めて作品の文脈が決まっている。

§ 04 / 04 批評と写真史上の位置

複製と文化的翻訳へ広がる近年の仕事

2025年の展覧会「Consuelo」では、写真だけでなく、家具、家庭内のオブジェクト、収集物が同じ空間に置かれた。Art Viewerの展示記録は、ルイスの近作が写真集だけで完結せず、複製物や生活用品を含むインスタレーションへ広がっていることを画像で確認できる*17

ルイスは2025年のSwiss Art Awardsで受賞者に選ばれた*14。FHNWは同年の審査評を紹介し、彼女の仕事が交換、模倣、翻訳、アプロプリエーション、再生産を継続して扱い、移住経験とも結びついていると説明している*18。《Bogotá D.C.》から近作まで共通するのは「文化」という抽象語より、写真や物が別の国、紙面、世代へ渡されたときに用途や読み方がどう変わるかを、具体的な物と出版形式で扱う点である。

写真集で、離れた場所と世代を比較する

近年の展示記録は、写真集中心の活動からインスタレーションへ広がった経路も示す。Contemporary Art Libraryには2019年のグループ展と2025年の「Consuelo」が記録されている*16。AICA Switzerlandは2025年の展示を初期作から近作までをつなぐ小規模な回顧として論じ、移住、複製、収集の問題を評価している*19

Photography Nowの展覧会記録では、《Bogotá D.C.》が2004年にCentre de la Photographie Genèveで個展として発表され、2007年には同館で「I feel it all」が開催された。写真センター、出版社、フェスティバルを横断して作品が流通してきたことは、写真集を主要な発表形式として扱う制作とも対応する。 *4

ArtNexusのコロンビア写真集特集が示すように、ルイスの仕事はラテンアメリカの写真集文化とスイスの現代美術・出版環境の双方にまたがる*20。《Bogotá D.C.》では120点の住宅写真を社会階層と題材の格子として比較し、《Kleine Fotoenzyklopädie》では旅先で集めた645点を私的な項目へ分け、《NY Apples and Pears》ではその一カテゴリだった果物を再印刷・切断して次の作品の材料にする。三冊では、写真集がそれぞれ住宅の比較、私的な百科事典、印刷画像の再加工という異なる役割を担っている。

§ REL 関連する写真家・運動
Photographers
  • シラナ・シャーバジ ― スイスを拠点に、写真の複製、印刷、異なる文化的コードを横断する比較対象。
  • ロザンジェラ・レノー ― 写真集とアーカイブを通して、像の保存と再文脈化を扱う。
  • ラテンアメリカの写真集文化 ― 展示記録に限定せず、本の順序と物質を作品の中心へ置く実践。
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