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PHOTOGRAPHERS/COLLECTIF_FACT ·コンセプチュアルアート ·UPDATED 2026.08
C
§ 211 — Photographer Index — コンセプチュアルアート

collectif_fact

collectif_fact 2000s–
Countryスイス Period1990–2000s Channelイメージを疑う · CONCEPTUAL
Abstract

collectif_factは、都市を、実写写真、映画の台詞、広告、アーカイブ画像、3Dスキャン、CG、音声が混ざった視覚環境として扱うアーティスト・デュオである。《Worldmaking》《CITYmulation》《White Shadow》では、現実の都市を撮る工程と、既存画像から別の世界を生成する工程を連続させ、私たちが「現実らしい都市」を認識するときに映画やデジタル画像の記憶がどれほど働いているかを検証してきた。

この写真家が変えたこと

都市写真は、目の前の街をカメラで記録する方法として発展してきた。一方collectif_factは、現代の都市がすでに映画、広告、監視映像、CG、地図サービスなどを通して理解されていることを出発点に、実写写真と3Dモデル、既存映像、音を同じ都市像の材料として扱った。《Worldmaking》から《White Shadow》では、写真は街を記録する像であると同時に、フォトグラメトリで新しい立体像を生成するデータにもなる。都市を「撮る」ことから、都市が画像技術によってどう作られて見えるかを検証する実践へ踏み込んだ。

Keywords コンセプチュアルアート 都市 3Dスキャン Worldmaking White Shadow 映画的モンタージュ シミュレーション
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目次 · Table of Contents
§ 01 / 04 背景と時代

collectif_factはAnnelore SchneiderとClaude Piguetによるスイスのデュオで、2000年代初頭から活動している。DDA Genèveは、二人がロンドンとジュネーヴを拠点にし、動画を中心に共同制作を続ける現在の体制を紹介する*1。初期にはSwann Thommenを含む三人組として活動した時期もあり、2010年のジュネーヴ市助成、2011年のSwiss Art Awardなどを経て国際的な展示へ広がった*2。 Wilde Galleryは現在のデュオをAnnelore SchneiderとClaude Piguetとし、ロンドンとジュネーヴを往来する活動を紹介している *3。 Goldsmithsの研究者記録には《White Shadow》と《Dissonance》が二人の共同制作として登録されている *4。 Acme Studiosは2024年のロンドン滞在と、デジタル画像の生産・消費をめぐる近年の研究を記録している *5

collectif_factの初期から現在までをつなぐのは、都市そのものより「都市を知るために使われる画像」への関心である。Centre d’Art Contemporain Genèveの《Worldmaking》は、都市計画・広告とハリウッド映画を二つの主要な領域として挙げる*2現在の公式略歴では、3Dスキャン、映画の台詞、アーカイブ画像、音の編集へ方法が広がり、デジタル画像の大量生産・消費が生む疎外感と環境負荷まで主題に入る。初期の「都市をどう見るか」という問いは、近年の「都市像を作るデータと画像が世界へどんな負荷を持つか」という問題へ連続している*6

§ 02 / 04 表現の核心

都市を、すでに画像で学習した場所として扱う

《Worldmaking》で二人が扱う都市は、初めて目にする場所であっても、どこか見覚えがある。Centre d’Art Contemporain Genèveが都市計画・広告とハリウッド映画を主要テーマとして挙げるように、巨大なビル、無人の道路、俯瞰する視点、特定の照明は、現実の都市経験と映画・広告で学んだ視覚記憶を同時に呼び出す*2。彼らが都市写真へ映画のコードを持ち込む理由は、現代の都市を見る目自体がすでにそうした画像の蓄積によって訓練されている、と考えるためである。

映画・広告・3Dの記憶を編集し、「現実らしさ」を作る

Tenderpixelはcollectif_factの映像を、映画の台詞、引用、音楽断片、映画史への参照が絡む仕事として説明する*7。公式略歴も、3Dスキャン、映画の台詞、アーカイブ画像、音を編集し、見覚えのある像からコラージュを作る方法を記している*6。ここで編集は、別々の媒体を一つにまとめる技術以上の役割を持つ。どの断片を先に見せ、どの音を重ねるかによって、実在する場所と生成された場所の境界が曖昧になり、観客自身の記憶が「これはありそうだ」という感覚を補う。

「近い未来」は、現在の画像習慣を少しだけ進めて作る

DDA Genèveのインタビューで二人は、自作の映像について「近い未来を演じる」という趣旨の表現を使っている*8。現在の都市、スマートフォン、サーバー、広告、CGの延長を少し誇張し、近未来を組み立てる。そのため画面には現実感が残る。HEAD Genèveの「Narratives of a Near Future」でも、芸術と科学を横断して未来を現在の知覚と行動へ結びつける枠組みが提示され、collectif_factの実践と近い問題系が共有された*9

§ 03 / 04 代表作・方法・媒体

Worldmaking — 都市を「撮る」ことと「作る」ことを連続させる

2011年の《Worldmaking》では、都市、広告、映画の視覚語彙が映像と写真へ組み込まれた*2。公式プロジェクトページは、同展をcollectif_factの重要な個展として記録する*10。タイトルが示す通り、世界は、どの像を選び、どの順に接続し、どの音を重ねるかによって制作される。ここで写真は都市の証拠であると同時に、別の都市を合成する素材になる。

White Shadow — 3Dスキャンの「データ」を物の山として想像する

《White Shadow》は、ネット上のライブラリからダウンロードした既存3Dスキャンと音を使って制作された10分40秒の映像である*11。公式テキストは、セルフィー、食べ物、車などの画像がもし物体へ変わって空間を埋めたら、という想像から始まる。Swiss Art Awardsでは映像と12点の画像シリーズが提示され、フォトグラメトリとデジタル画像の物質性が前面に出た*12。画像過剰を抽象的な「情報量」として語る代わりに、都市を塞ぐ物の堆積として見せる点がこの作品の強さである。 Chronus Art Centerは同作を、平面画像が巨大な3D物体へ変わり、デジタル生産の物質的・生態的負荷まで可視化する作品として紹介している *13

CITYmulation / At a Loss for Words — 都市と会話をシミュレーションへ入れる

《CITYmulation》では、実在都市の断片とモデル化された空間を往復させ、都市そのものをシミュレーションとして経験させる*14。Centre de la photographie Genèveでの発表記録も、この作品を写真と映像の境界で都市表象を扱うプロジェクトとして位置づけている*15。《At a Loss for Words》では、映画的な会話と映像のずれがコミュニケーションの不確かさを作る*16。Wilde Galleryの《Dissonance》では、映像、写真、シルクスクリーン、オブジェが一つの投機的シナリオを構成し、世界を作る編集方法が展示全体へ展開した*17Swiss Cultural Fundは《At a Loss for Words》を、映画的コードを分解しながら、別れ話をする二人が複数のコミュニケーション方法を試す映像として紹介している*18

共同制作の「ping-pong」が、世界像を何度も編集する

DDA Genèveのインタビューで二人は、長年の共同制作を「ping-pong」のような応答として説明している*8。一人が撮った像にもう一人が音や引用を加え、そこから再び編集判断が返される。都市を一人の視点で断定する代わりに、複数の素材と判断が往復した結果として一つの世界を成立させる制作方法である。この共同性は、作品が扱う「現実らしさ」そのものも、個人の目に加え、共有された映画、広告、デジタル画像の記憶からできているという問題とよく響き合う。

写真は最終画像にも、3D世界を作る素材にもなる

《White Shadow》で重要なのは、写真が完成した平面画像として提示され、さらにフォトグラメトリによって立体モデルを生成する入力データにもなる点である。Swiss Art Awardsは、この技術とデジタル画像の物質性を作品の中心に挙げる*12。一枚の視点を選んで都市を記録する写真と、物体の周囲から多数の画像を採取して計算可能なモデルを作る写真が同じ実践に共存する。写真の役割が「都市の像」から「別の都市像を計算する材料」まで広がることで、デジタル以後の写真がどこで終わるのかという境界そのものが作品化される。

§ 04 / 04 批評と写真史上の位置

写真は、映像・CG・3Dデータと同じ画像経済を流れる

collectif_factの展示では、静止写真、映像、3Dモデル、音、テキストが互いの文脈を作る。Réseau Documents d’Artistesは、デジタル画像とコンテンツの大量生産、その遍在性、疎外感、環境的影響を現在の主要テーマとして整理している*19。《White Shadow》では、ネット上で流通する3Dデータをダウンロードして作品へ再投入するため、画像は鑑賞物であると同時に再利用される資源でもある。ここでは画像の採取・流通・再編集・保存の連鎖までが作品の射程になる。 2011年のMaison Européenne de la Photographie「L’objet photographique」にcollectif_factが参加した事実は、この実践が写真の物質・装置・支持体を再考する文脈でも受容されてきたことを示す*20

都市のリアリティは、編集された記憶から立ち上がる

彼らの都市像には、道路、建築、標識、広告といった実在の要素が多い。同時に、映画のワンシーンやゲーム空間に似た既視感が強く働く。Kunsthaus Basellandは早い段階から、都市空間と映像的な構成を組み合わせる実践としてcollectif_factを紹介していた*21。なぜその風景を「未来都市らしい」「不穏な街らしい」と感じるのかを考えることが作品の入口になる。

フォトグラメトリは、カメラを「表面を採取する装置」に変える

《White Shadow》で使われる3Dスキャンは、多数の写真から物体の立体形状を再構成するフォトグラメトリと結びつく。Swiss Art Awardsの紹介は、この技術を作品の重要な制作方法として明示する*12。一枚の決定的な視点を選ぶ撮影とは違い、物体の周囲から大量の画像を採取し、計算によってモデルを作る。カメラは構図を決める道具であると同時に、3Dデータを生成するためのセンサーになる。

既視感を利用し、観客の頭の中にある画像庫を動かす

Tenderpixelの展示タイトル「Suspension of Disbelief」が示すように、作品は観客がフィクションへ入り込む習慣を積極的に利用する*7。DDA Genèveの解説も、観客が像に引き込まれ、少し騙される欲望を重要な要素として挙げる*1。その「騙される」感覚には、映画、広告、写真、CGを長年見てきた記憶が自動的に働いている。

§ REL 関連する写真家・運動
Photographers
  • ジェラード・バーン ― 映画や既存メディアの文法を引用し、見える現実が形式によって作られることを扱う。
  • ワリード・ラード/The Atlas Group ― 事実とフィクション、アーカイブの境界を扱う比較対象。
  • ポストコンセプチュアル写真 ― 撮影画像を映像、データ、展示装置と接続する2000年代以降の実践。
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