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PHOTOGRAPHERS/FABIAN MARTI ·コンセプチュアルアート ·UPDATED 2026.08
FM
§ 259 — Photographer Index — コンセプチュアルアート

ファビアン・マルティ

Fabian Marti 1979–
Countryスイス Period2000–2010s Channelイメージを疑う · CONCEPTUAL
Abstract

ファビアン・マルティは、スキャナー、傷つけたネガ、フォトグラム、流用画像、陶芸、映像、インスタレーションを横断するスイスの作家である。スキャン面の埃や傷、ネガへの描画、コンピューターで作った型を暗室へ戻す工程を使い、写真像がどの機械と手作業を通って作られたかを画面に残す。2000年代以降のデジタル画像を「きれいに補正する技術」として扱わず、複製、偶然、物質、神秘主義的な記号が混ざる場所として扱った点が重要である。

この写真家が変えたこと

マルティが写真に持ち込んだのは、デジタル画像を滑らかで制御された完成物として扱う方法への抵抗である。スキャナー、傷つけたネガ、フォトグラムを使い、機械の複製に埃、傷、露光の偶然を残した。同時に、頭蓋骨、仮面、十字、結晶、SF小説の表紙のような、すでに意味を背負った記号を反転、重複、切断、再スキャンした。画像の物理的な痕跡と記号の意味をどちらも固定せず、デジタルと暗室を往復する制作工程そのものを写真へ残した。

Keywords スキャナー・カメラ フォトグラム 傷つけたネガ Less Than Zero Bilder 2005-2016 流用 写真の物質性 アナログ/デジタル
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目次 · Table of Contents
§ 01 / 04 背景と時代

記録から人工的な像へ

マルティは1979年フリブール生まれで、2002年から2006年までチューリヒのHGKZ写真部門で学んだ。*1 その前後には友人や自分の周囲をアナログのスナップで撮っていたが、次第に身近な環境の記録だけでは制作が進まないと感じ、人工的に像を作る方向へ移った。Pro Helvetiaの論考は、写真学科で芸術写真と応用写真の区別が弱かったため、学生が自分の立場を明確にする必要があったこと、マルティがスナップからコラージュやスキャナーへ進んだことを記している。*12

初期の《Ape, Mom, I》では友人の肖像、スキャンした像、焼成した猿の頭蓋骨が同じ展示に置かれた。Peter Kilchmannの資料は、アナログ写真とスキャナーの組み合わせ、暗部や埃が画像の触覚的な質を作ることを説明している。*7 この時点で写真は身の回りを忠実に記録する媒体より、既にある像や物に手を加え、別の像へ変換する工程の中心になっている。

写真、陶芸、彫刻をつなぐ

マルティは写真、彫刻、陶芸を別々の活動として扱っていない。Kunsthaus Bielは、フォトグラム、陶芸、壁紙、他作家の作品交換を同じ実践として扱い、手工芸と大量生産、創造性と作者性を共通する問題として挙げている。*4 写真では、複製可能な像に、ネガの傷、スキャン面の埃、暗室での露光の偶然という一回の痕跡が重なる。マルティはこの性質を、陶芸やインスタレーションにも共通する制作条件として扱っている。

Kunstmuseum Luzernの展覧会では巨大なフォトグラム、映像、オブジェが一つの空間に組まれ、手仕事と触覚性が強調された。*5 写真を壁の一枚へ限定せず、光で作った平面を陶芸や建築的な支持体と並べることで、複製画像にも手の痕跡と物理的な尺度があることを示した。これは「写真か彫刻か」という分類より、像がどの物質を通るかを問う実践として連続している。

§ 02 / 04 表現の核心

スキャナーをカメラにする

マルティ本人はFlash Artのインタビューで、スキャナーをカメラとして使い、ネガを引っかき、線を描き、微細なコラージュを加えて拡大したと説明している。*2 スキャナーでは被写体とガラス面の距離がほぼゼロになり、埃、傷、接触面がそのまま画像へ入る。Fotomuseum Winterthurも、スキャナーによる像、フォトグラム、画像処理を、マルティの写真実践の中心として紹介している。*11

スキャナーの使用は、デジタル処理でノイズを消す方向とは逆に、接触面の埃や傷を像へ残した。通常なら除去される痕跡を拡大することで、画像は情報を滑らかに運ぶ面から、機械と物が接触した記録へ変わる。artTVのCoalmine紹介は、開いたスキャナーが深い黒を作り、装置そのものが像を生成する「デジタル・フォトグラム」に近い方法として説明している。*19

デジタルと暗室を接続する

スキャナーを使い尽くした後、マルティはフォトグラムへ移った。ATP Diaryのインタビューで、コンピューター上で作った素材を写真印画紙へ置くことでデジタルとアナログを一つの工程へ入れ、古い技法を現在の作品へ使うことに関心があったと語っている。*15 Parc Saint Légerでは会場内に暗室を作って制作し、制作場所自体を展示へ組み込んだ。*3

フォトグラムの使用は「アナログへの回帰」という懐古を目的にしていない。デジタルで設計した形が暗室で光と物質に触れることで、完全には同じ結果にならない工程が作品へ入る。Swiss Reのコレクション解説も、手作業と最新の複製技術を組み合わせ、制御を失う過程を作品へ含める点を強調している。*18 デジタルとアナログは対立する二種類の写真ではなく、一つの像が往復する制作工程として扱われる。

傷、埃、偶然を残す

マルティの作品では、偶然は失敗として排除されない。傷、埃、露光のずれ、焼成した陶器の歪みなど、作者が完全に決められない結果が残る。Kunstverein Braunschweigは、多重露光、反転、流用、フォトグラムを通じ、画像が時間や集合的記憶と結びつく過程を紹介している。*1 Swiss Reは、シュルレアリスムのフォトグラムとの接点を挙げつつ、制御を緩めることで予期しない結果や潜在意識が入り込む点を指摘する。*18

この考えは、Photoshopを「何でも意図どおりにできる道具」として使う態度と対照的である。マルティはデジタル効果の多くに暗室技法の先行形があることへ気づき、両方を混ぜたと語っている。*2 同じインタビューでは、制作中に偶然を入り込ませ、すでに知っている像を繰り返さない方向へ進むとも説明している。*20

神秘主義とSF

頭蓋骨、十字、渦巻き、結晶、卵、仮面、SF小説の表紙、幻覚作用を持つ植物が反復するのは、神秘的な雰囲気を作るためだけではない。2009年のMousseのインタビューでマルティは、過去の知識が理性的な知識より感覚や感情として人間に刻まれているという考えから、古く広く知られた「archetype」を使うと説明している。*20 記号は最初から意味を持っているため、反転、重複、組み合わせによって、その意味が別の方向へ転じる瞬間を作れる。本人も、記号が決まった意味を運ぶという期待を利用し、それが反対側へ反転する地点を狙うと語っている。*20

Flash Artのインタビューでは、インターネットで購入したアフリカの仮面を使う理由として、初期20世紀前衛による仮面の受容、儀礼的・神秘的な含意、肖像との関係を同時に挙げている。*2 Parc Saint Légerも、マルティが参照する前衛芸術を、科学、文学、心理学へ接近しながら知覚や潜在意識を探った歴史と結びつけ、オルフィスム、ウォレス・バーマン、テレンス・マッケナまでを関連づけている。*3 Mousseのインタビューで本人は、古く広く知られた図像を「archetype」として使い、記号が決まった意味を運ぶという鑑賞者の期待を、意味が反転する地点まで利用すると説明している。*20 頭蓋骨、十字、剣、結晶、仮面が繰り返されるのは、神秘的な雰囲気を付けるためだけではなく、既知の意味を読み込ませた直後に、その意味を不安定にするためである。

Mousseでマルティは、美術史や歴史のアーカイブを「collective memory」として使うと述べている。*20 1950〜60年代の雑誌、1970〜80年代のパルプSF、宗教的図像、民族誌的な像は、出典を説明する資料として保存されるのではなく、すでに流通している文化的な記憶として再加工される。同じ対話で、流用画像への線やテープを「歪曲」ではなく、画像の読み方を複数化する抽象的な層として扱うと説明している。*20

§ 03 / 04 代表作・方法・媒体

初期作と流用画像

2007年の《Ape, Mom, I》では、初期写真、スキャン画像、陶製の猿の頭蓋骨が展示され、写真からオブジェへ広がる方向が明確になった。*7 同時期の《Kaleidoscope》では古いSF本の表紙を加工し、題名や元の意味を覆いながら再スキャンする。Collection Pictetは、この操作によって時代遅れになった図像へ新しい意味の可能性を開くと説明している。*16

《Heroic Dose》

《Heroic Dose》は2011年に制作され、ガラス、鉄、陶製の鉢、幻覚作用を持つ植物を組み合わせた温室状のインスタレーションである。Migros Museumは、1960年代以降のニューエイジ文化とモダニズムの形式が衝突する作品として解説している。*6 写真以外の素材へ広がっても、既知の文化的記号を別の組み合わせへ置き直す方法は継続している。

ヴェネツィアとフォトグラム

2011年、マルティは第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ《ILLUMInations》へ参加した。La Biennaleの歴史資料に参加記録が残る。*9 その後も大型フォトグラムを展示空間へ拡張し、Kunstmuseum Luzernでは壁面を占める光の像と陶芸、映像を組み合わせた。*5 写真を額の中の完成画像として扱わず、鑑賞空間の尺度へ広げたことが、この時期の大きな展開である。

《Marti Collection》と作品集

2013年の《Marti Collection》では、他作家との作品交換によって集めた作品を展示し、作者本人の新作だけで個展を構成する慣習を崩した。Kunsthaus Bielは、非貨幣的な交換ネットワークと、創造性・作者性への問いを展覧会の中心に置いている。*4 2016年の作品集『Fabian Marti. Bilder 2005–2016』は、フォトグラムとインクジェットプリントを技法・形式の連関で編集し、十年以上の写真実践をまとめた。Swiss Federal Office of Cultureの出版記録も、フォトグラムとインクジェットプリントを形式的な連関で編集した構成を記録している。*8

§ 04 / 04 批評と写真史上の位置

フォトグラムの歴史

マルティのフォトグラムは、マン・レイやラースロー・モホイ=ナジが1920年代に行ったカメラレス写真と技法上の接点を持つ。Guggenheim Bilbaoは、20世紀以降の「新しい見方」を扱う展示で、光、抽象、技術実験の系譜に現代作品を接続している。*13 ただしマルティの素材はコンピューターで生成した形、スキャン画像、流用されたSFや宗教図像まで含み、フォトグラムを歴史的技法の再演だけにはしない。ATP Diaryで本人が「古い技法で現在の作品を作る」と説明していることが、この距離を端的に示す。*15

流用と作者性

マルティのもう一つの批評軸は、画像を「自分のもの」とする作者性である。Pro Helvetiaの論考題名が「The Curse and the Power of Appropriation」であるように、彼の制作は既存画像を借り、傷つけ、複製し、出典の意味を不安定にすることと結びついている。*12 Peter Kilchmannの作家資料も、コピー機やスキャナー、既存イメージを通じて、創造性と作者の役割を問い続けていると説明する。*17 2014年の《All is All》では、フォトグラム、彫刻、壁面作品を同じ展示へ置き、手作業と機械的複製を組み合わせる方法が明示された。*14

《Marti Collection》では、作者性の問題が画像加工から作品の所有と交換へ展開した。他作家の作品を購入して集める通常のコレクションとは異なり、作品交換によって形成された関係そのものを展示へ含めた。*4 流用は元画像を加工する技巧だけではなく、誰が作品を作り、所有し、価値を決めるのかという制度的な問いと結びついている。

写真と陶芸の共通点

写真と陶芸には、作者の意図だけでは決まらない物質的な結果が共通している。写真では埃、傷、露光のずれが残り、陶芸では手の圧力や焼成による歪みが残る。Kunstmuseum Luzernは、巨大なフォトグラムと手作業のオブジェを、人間の身体尺度と触覚性の問題として同じ空間に配置した。*5 媒体の違いより、制作工程に偶然と物質の痕跡をどのように残すかが作品群をつないでいる。

2000年代以降、デジタル画像が滑らかに複製される環境の中で、マルティは機械を使うほど傷や埃を増やし、古い暗室技法へ戻るほどコンピューター生成素材を持ち込んだ。Friezeの展評も、写真、彫刻、流用、神秘的な記号が一つの展示で混在する点を批評している。*10 彼の位置は「デジタル派」「アナログ派」のどちらかではなく、両方の工程を往復させ、像がどこで物質へ触れるかを作品に残した点にある。

§ REL 関連する写真家・運動
Photographers
  • ラースロー・モホイ=ナジ ― フォトグラム、光、カメラレス写真の技術実験で重要な先行例。マルティはそこへスキャナー、デジタル処理、流用画像、インスタレーションを加える。
  • ジグマー・ポルケ ― 写真化学、複製画像、偶然、錬金術的・神秘主義的な図像の操作という点で比較できる。
  • トーマス・ルフ ― 既存画像やデジタル/アナログの技術条件を写真の主題にする点で接続するが、マルティは手作業と象徴的図像の比重が大きい。
Movements / Contexts
  • カメラレス写真 ― レンズ式カメラを介さず、光やスキャンの接触から像を作る写真。
  • ポストメディウム ― 写真、彫刻、映像、出版、展示を一つの媒体へ固定せず、方法の連続として扱う現代美術の文脈。
  • 流用/アプロプリエーション ― 既存画像を再利用し、出典、作者性、歴史的意味を加工によって再検討する実践。
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§ SRC 出典

出典 — 美術館・アーカイブ・専門資料(このページの §SRC に個別記載)

本文執筆 — AI

構成・編集 — 写真の座標 管理人

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